UCD from Bullsxxt メールインタビュー!
■アルバム『BULLSXXT』の発売おめでとうございます!
改めて制作期間を振り返ってみて、今作に対する想いはいかがでしょうか?
リリックは3-4年前に書いたものばかりなので、今となっては直したい部分も少しありますが、いま出し切れるだけを出しました。このアルバムの制作を通して成長しているという感覚があったので、自分としても記憶に残る一枚だと思います。1枚作ったことでいろいろな可能性が見えてきたので、「ここから始まる!」って感じです。
■アルバムのコンセプトやテーマを教えてください。
演奏(トラック)に関しては特に全体のコンセプトを決めずに制作しました。スタジオでのセッションを通してメンバーの無意識とか欲望が混じり合ってできたものです。みんな基本的にブラックミュージックが好きなので、音にしてもグルーヴにしても黒っぽいものにはなったかなと思います。リリックについても同じです。特になにか計画があったわけではなく、楽器隊が作ったトラックに導かれてことばが出てきた感じです。結果として出てきたものを自分で批評するならテーマは「傷」と「賭け」です。人間は自分の出自を選べません。このようにして生まれてしまった。そして必ず死にます。それ自体が悲劇的であり、「傷」です。その「傷」を直視しながら、行き先の見えない方へ、夜の方へと乗り出してみること。それは「賭け」です。危ういですが、そこからしか前進はありません。このアルバムが、僕に似た誰かにとって前に進むための力になれば嬉しいです。
■今作はリリックの中に国内外のアーティスト名があったり、リリックの引用があったり、
思わず反応してしまう言い回しが散りばめられている印象がありました。どういう想いが込められているのでしょうか?
リスペクトが込められています。
■一聴すると全体的にCHILLな雰囲気はありますが、リリックの主張や強度は強く感じました。
この辺りは何かこだわりはありますか?
特にこだわりはありません。たぶん他の人と同じく、普段から思っていることが出てきた感じだと思います。
■様々な表現方法があると思いますが、何故その中でHIP HOPに魅力を感じたのでしょうか?
初期衝動を教えてください。
はじめるのに一番予算がかからない貧乏人の音楽なので、そこが魅力だと思います。
■これまでの活動していく中で分岐点がいくつもあったと思いますが、
印象に残っている出来事はありますか?
とある曲のレコーディングの際に、初めてグルーヴの感覚を捉えることができたのが強く印象に残っています。
少年がチャリをこげるようになった時の感じです。
■注目しているMC、DJ、トラックメイカーを教えてください。
やっぱりKendrickとChanceですね。日本だとC.O.S.A.とRAMZAがヤバいと思います。
■音楽の中でやられたパンチラインはありますか?
Curtis Mayfield "Keep on keeping on"に「引き渡し続けろ/生き延び続けるんだ/お前もわかるだろ/その正しさのために」「続けることを続けるだけだ」というラインがあって聴くたびに「マジそれしかねーよな」って思います。あと、C.O.S.A."GZA1987"に「リリシズムが原因でぶっ殺されてもしゃーねえと俺は思っとるでよ」とありますが、これはもうこれ以上ないパンチラインですね。
■UCDさんが想う、HIP HOP美学はありますか?
HIPHOPに限らず、自己の救済が、他者の救済につながり、過去と未来を同時に救済するようなアートはすべて美しいと思います。
■今まで経験したイベントで、伝説的だったと思えるエピソードがあれば教えてください。
以前イベントでECDさんと共演できたことは、なにものにも代えがたい光栄な出来事でした。
■最後に、音楽とは関係ない所で、現在興味があることがあれば教えてください。
ピエール・ルジャンドルという人が提唱するドグマ人類学です。現在の知の状況を刷新する力があると思います。HIPHOPの精神とも共鳴する彼のことばを一言だけ引用しておきます。「唯一、詩にたいする権利の行使だけが、いまだにわれわれを科学主義者どもの野蛮さから守ってくれる」(『人間という動物と、その傷痕』より)
■ありがとうございました! |